
『10年小商い』
自由と現実のあいだで生きのびる
磯木淳寛 著
この本について
『10年小商い~自由と現実のあいだで生きのびる~』
10年前、彼らは地方で好きなことを仕事にして、
精神的に自由に暮らしていた。
それから10年、コロナ禍などの荒波に
飲まれず、彼らは生き延びたのか?
もし生き延びていたなら、
彼らの「10年ストーリー」は、
小さくとも自分の仕事を始めてみたいと
考えるすべての人の、道しるべになると思う。
小さな自分の仕事を続けるということ
地方で自分の小さな仕事で暮らす人たちに驚いたことを書いた前作を出版してから、いろんな地域でお話をする機会を頂きました。
そのなかで、参加者から繰り返された印象的な質問が、「地方で小商いで生計を立てて暮らすことは、一時的にやれたとしても、長く続けられるのか?」というもの。
そこにはストレートに言って「無理でしょ」という懐疑的な目線が含まれていました。
でも、質問してくれた人と同じように、これを続けていけるのか?については、当然ながら、ぼくにもわかりませんでした。
そして、同じように知りたいと思いました。
続けられた人も、続けられなくて辞めた人にも全員に話を聞いてみたい、と。
地方で自分の小さな仕事を始めた彼らはどうやって10年間、生き延びたのか?
どのようにコロナ禍を乗り越えたのか?
10年経ち、彼らのその後を追ってみた。
テーマは「継続」
「10年小商い」は、地方で小さく始めて10年続けた人たちの、
自由と現実のあいだのドキュメントであり、なぜ続くのかを考察した本です。
前作を出版後すぐに構想を始め、小さな商いと場づくりの継続をテーマに18組を取材しました。
地方でも、自分の仕事を変わらずに続けていくためには、変わり続けないといけません。
「すごい!」というアイデアや工夫もあれば、圧倒される地道な努力もありました。
そして苦難と喜び。
取材先のみなさんが、今回もとても赤裸々に語ってくれました。
仕事について聞いたはずが、もはや『10年』は人生です。
制作中に同じ原稿を何度も読み返すのですが、そのたびに感情を動かされました。
単純な成功物語はひとつもない
順調に商いを続けられた人はひとりもいません。
この10年のなかにはコロナという大波もありました。
社会の変化、火事、事故、体調不良など思わぬ出来事も起きます。
「地方で自分の小さな仕事を始めたら自由になった」という単純な成功物語はひとつもありません。
18組の多くは、30代で店を持たずマーケットで対面販売するところから自分の商いを始めた人たちです。ここには、彼らが10年続けて40代になり、さまざまな経験や感情や思考の積み重ねがあります。
自由であることと、生活を成り立たせること。
好きなことを仕事にすることと、利益を出し続けること。
地域で暮らすことと、仕事を続けること。
その間で揺れながら、それぞれのやり方で10年間を生きてきた人たちの、リアルな記録です。
さらに、10年間の取材を通して見えてきた「小商いを続けるために大切なこと」を考察し、まとめました。
地方での小さな「自分の仕事」は、本当に10年続くのか。
その答えを、18組の10年間から探りました。
<お話を聞いた人たち>
今野もとこ(コーヒーくろねこ舎)/木村洋平(杢珈琲)/紺野雄平(SPAiCE COFFEE)
磯木知子(Another Belly Cakes)/坂本勝彦(おにぎり工房かっつぁん)
柴田千代(チーズ工房【千】sen)/荒井正俊・陽子(moonchild)
小高善和(小高善和靴工房)/松永さやか(sayasaya)/古柴房枝(Life*Bonz)
関田裕明(ツヅリ装身具)/中西圭(備長炭火やきとり麻顔)
ほか、全18人
10年続く商いの考察
18組への取材だけでなく、そこから見えてきたことを考察しました。
『「田舎でカフェなんて成り立たない」は本当か?』
では、田舎で続いている店とそうでない店を比較し、成立するために必要なことはなんなのかを考え、
『計画や戦略やマーケティングよりも重要なこと』
では、未経験ながら過疎の町でコーヒー店を10年続けるプレイヤーから学べることを整理し、
『なぜ、商品をネットで売らないのか?』では、
あくまでも対面販売を優先することはなぜかということへの合理的な理由をまとめました。
また、『全体の概論』として、
10年後にも続く人とはどんな人で、どんな工夫を続けてきた人なのか?
未経験からスタートした人たちの生存戦略とは?
生き延びた人たち全員がおこなっていた共通戦略とは?
に加え、売る技術と複合的な工夫、長続きを阻むものはなんなのかについてもページを大きく割きました。
「場づくり」という仕事を長く続けるには
対面の商いは、人が集まる場をつくることとの親和性もあります。
また、地方で場づくりを仕事にしたいという人も多いです。
社交性より「続く仕組み」のデザイン、継続事例を深掘りする視点、
続けていくお金を具体的につくること、失敗事例と成功事例から見えてくること、
気持ちよいつながりのためのアイデア。
全国の人が集まる場を見てきた知見で、長く続く「場」について考え、まとめました。
商いの場をつくる、という観点から、房総いすみ地域のマーケット文化と比較して、
長野県辰野町の商店街に商いの場をつくる赤羽孝太さんの活動も追いました。
「自分の仕事」を続けたい人のための本です。
「前作を読んで地方移住した」という声を頂くこともありました。
しかし、彼らのなかには自分でつくった仕事が続かずに撤退する姿を見ることもありました。
彼らのためにも、より具体的に役立つ内容を届けたいという思いもありました。
地方で自分の小さな仕事をしている人たちに取材しましたが、
小さい仕事だからこそ、働くことの全体像がよく見えます。
なにより、多くの人が、収入、支出、その推移なども詳細に語ってくれました。
役に立ちすぎる本は色気がありませんが、
なんの役にも立たない本を人に買ってもらうのも恐縮してしまいます。
そんないろんな感情を抱えつつ、書いた結果、
役に立てようとしなくても興味深く読めて、
役立てたいという人にはとにかく役に立つ本になったように、自分では感じています。
どんな仕事だって、続けることは簡単ではありません。
そして、どんな人も働くこととは無縁ではいられません。
これから自分の小さな仕事を始めたい人はもちろん、すでに商いをしている人、地方で働くことや暮らすことを考えている人、会社員とは違う働き方に興味がある人にも読んでほしい一冊です。







